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コラム
(36) The Biggest News in Philanthropy: A Divorce!
マーティ・キーナート
2021年5月3日、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツとその妻メリンダは、27年間の結婚生活に終止符を打つと発表しました。これは慈善事業の世界に大きな衝撃を与えました。彼らは、ビルアンドメリンダ基金を2000年に設立。これは世界第1位の慈善団体です。彼らの基金は約5兆円を保有し、毎年少なくとも5,000億円以上を世界中に寄附しています。世界中のNPO法人をはじめ、企業そして政府までもが彼らの基金を最大の寄附として当てにしています。
ビルアンドメリンダ基金は多くの企業も保有しており、その中にはフォーシーズンズホテルチェーンもあります。また25万エーカー(1エーカーは約1,224坪)にも及ぶ農場用敷地を持ち、米国随一の農耕地の所有者でもあります。また、この基金は1,600人以上の従業員で運営されています。
この基金のホームページを見ると
“We are a nonprofit fighting poverty, disease, and inequity around the world.”
「私たちは、世界の不平等、疫病、貧困と戦う非営利団体です」と明記されています。
去年は1,000億円以上をコロナウィルスのワクチン試作に寄附しています。
設立から21年間、この基金は世界中の健康と貧困連鎖の問題に取り組んでおり、マラリア撲滅、HIVウィルス治療、喫煙による死亡率の改善などに大きく貢献しています。また米国の多くの教育プログラムも立ち上げています。この基金は世界第2位のフォード基金の3.5倍の規模を持ち、またその10倍近い金額を毎年寄附している世界最大の基金なのです。
ですから、この基金の恩恵に預かっている世界中の団体が、今回のビルとメリンダの離婚に対してこの基金の行方を心配するのは当然のことです。
米国では法律上、離婚の際は大抵が全ての財産を2分割します。この法律のおかげで、財産分割のために夫婦が所有する事業を売りに出すことも珍しくはないのです。2009年、野球のロサンゼルス・ドジャース球団のオーナーであったフランク・マクコートと妻ジェイミーが離婚した際、彼は裁判所から妻に支払うように命じられた金額を捻出するため球団を売りに出さなくてはならなくなったのです。
ですから、ビルとメリンダの離婚発表の後、多くの人がこの夫妻の慈善事業も終焉を迎えるのかと恐れました。しかし、幸いにもこの基金は夫妻の共有財産とはなっていなかったのです。ゲイツ夫妻が基金に投じた金額は取り戻しが効かないものであり、それは彼らの個人の所有とはならないという事でした。
また、ゲイツ夫妻は共同代表と理事を引き続き務めるということ、そして基金の運営と方針には変わらず支障がないことを表明しました。
フォーブス誌によるとゲイツ夫妻の資産は約13兆円で、彼らはすでにその財産のほとんどを死後20年に渡り彼らの基金に寄贈することを公表もしています。
彼らの基金が設立されてから、世界の5歳以下の乳幼児死亡率は実に半分になったとのことです。何百万人もの子供たちが彼らの基金によって命を救われました。
そしてこれからもそれが続くことを願っています。
https://www.gatesfoundation.org
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マーティ・キーナート
<プロフィール>
アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。
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