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コラム
(26) Even Stanford Needs Philanthropy to Save Athletic Programs
マーティ・キーナート
私の母校はアメリカのスタンフォード大学ですが、私はいまでもこの大学に入学できた事を大変ラッキーだったと感じています。スタンフォード大学は世界の大学ランキングで常にトップ5位以内の不動の位置を保っています。私が1964年に入学した当時、合格倍率がどのぐらいだったのかはよく覚えていないのですが、昨年のスタンフォード大学の合格倍率は21倍でした。しかも世界中からの優秀な受験生の中の21人に対しての1人です。私がもし現代の学生なら入学できる自信はありません。なぜなら私の時代では競争相手はほぼアメリカ人だけでしたから。
世界中の優秀な学生がスタンフォード大学に入学したい理由の1つは、その高い教育レベルにあるでしょう。 もし、今貴方がスタンフォード大学に入学できたなら、現在17人いるノーベル賞受賞教授の何人かに指導してもらえる機会があるのです。私の場合、勉学だけでなく野球をする為にもスタンフォード大学への入学を選びました。なぜなら、スタンフォードの野球部は良いチームであることに加え、幸いな事に私は野球での一部奨学金を得る事もできたからです。
ちなみに入学してから、スタンフォード大学が学業に優秀な学生にだけでなくスポーツに秀でている学生にも同じぐらいの力を注いでいることを知りました。
約7000人の大学生に対して、NCAA(National Collegiate Athletic Association) :全米大学体育協会のトップディビジョンで全国優勝タイトルを今までに126獲得しています。これは全米のどの大学よりも多い数です。また過去44年間連続して毎年、何いずれかのスポーツで少なくとも1つ以上の全国優勝を成し遂げています。さらにスタンフォード大学は、現在までに270のオリンピックメダルを獲得していますが、これは学生在籍数2万人の南カルフォルニア大学に次いで2番目のメダル獲得数です。
また、私だけがスタンフォード大学でトップレベルの大学スポーツ選手になりたいと熱望していたわけではありません。スタンフォード大学では12%の学生(約850人)が高いレベルでのカレッジスポーツを行っているのです。これは、アメリカの他大学に比べるとかなり多い割合です。スタンフォード大学は36もの多様なスポーツの部(バーシティ(Varsity) チーム)があり、これは同じトップディビィジョン1の大学の平均に比べると倍の数になります。
しかしながら、スタンフォード大学は2020-21年のシーズン、この36の部のうち、11の部を廃部すると発表しました。この事は、私のようにスポーツを愛する卒業生としては大変ショックな出来事でした。240人もの学生が大学トップレベルでプレイする機会を失うばかりでなく、22人のコーチと20人ものスタッフもその職を失う事になりました。この廃部される11のスポーツは、20の全国大会優勝杯と27のオリンピックメダルを獲得しているにも関わらずです。
この劇的な決断はなぜでしょうか? 予算です。
この廃部される11の部は、観客数が少ないスポーツです。観客数が少ないという事はチケット売上も少なく、それと同時に興味を持つ人が少ないという事になります。興味を持つ人が少ないという事は、寄附金も少ないという事です。なお、この11の部とは、男女のフェンシング、フィールドホッケー、軽量ボート、男子ボート、男女セーリング、スカッシュ、アーティスティックスイミング、男子バレーボールと男子レスリングです。
これらの11の部は、長年”money losers” -金食い虫- とされてきました。2020-21のシーズンでは赤字が約12億円計上されていましたが、このコロナウィルスの影響で、25億円以上の赤字と予測されました。そこで大学としては苦渋の決断として、残りの25の部を守る為にこの11の部を廃部する事を決めたのです。
2兆7700億円もの基金を持つ資金潤沢なスタンフォード大学が、この11の部を支えるだけの資金がないのかと訝る向きも多いかもしれません。が、このプレスリリースの際、「スタンフォード大学は際限ない基金があると思われているかもしれませんが、私たちの基金の大半は学生への財政援助を含める長期的な目的に直接使用されるのです」と明言されていました。
11の部が廃部してしまうことは残念な事です。しかし私は楽観視しています。この11の部には合わせて4000人もの熱心な同窓会応援団がいるからです。彼らの寄附金をもってすれば、これらの部はきっとクラブスポーツとしては存続する事ができるでしょう。そして彼らの慈善がきっとスタンフォード大学生の文武両道を貫く手助けをしてくれるだろうと信じています。
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マーティ・キーナート
<プロフィール>
アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。
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