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コラム
(9)Can a donation to a university be a bad thing?
マーティ・キーナート
ここ数カ月、アメリカでは大学への多額の寄附のニュースが話題をさらっていました。ニューヨーク在住で著名な投資家のステファン・シュワルツマン氏はイエール大学のパフォーミングアートセンター建設のために165億円もの寄附をしたばかりです。
また、ナイキの創設者フィル・ナイト氏は、スタンフォード大学院ビジネススクールの奨学金のために440億円を提供しました。
更に、最も巨額で人々を驚かせたのは、元NY市長でブルームバーグニュースの創立者でもあるマイケル・ブルームバーグ氏が1980億円もの寄附をジョン・ホプキンス大学へ贈ったのです。これは、ジョン・ホプキンス大に入学許可された学生であれば、学費のめどがつかなくても誰でも必ずホプキンス大にて勉学に励むことが出来るようにするものです。これは、アメリカの大学に贈られた寄附金としては最高の額です。
ブルームバーグ氏は、この寛大な寄附についてこう語っています。「これにより、ホプキンス大では経済的事情でホプキンス大を諦めるという学生が永遠にいなくなります。大学は、更に幅広いレベルのファイナンシャルエイド(経済支援)を与えることができるばかりか、現行の学生ローンを奨学金に変換できます。多くの卒業生が抱える学生ローンの返済の手助けにもなりますし、学生が抱える経済的事情を解決することでしょう。また、そのことによってホプキンス大はより社会経済的にも多種多様なキャンパスと成り得ます。」
表面的に見るとこのようなチャリティ行為は称賛のみを集めるものなのですが、しかしながら、これらの寄附行為を批判する向きも出てきています。
問題は、これらの資産家の人々がすでに資金豊富である母校にのみ大金を寄附しているということです。イエール大の基金は2兆9920億円にも上りますし、スタンフォード大の基金は2兆7280億円です。これらは、全米一の基金を持つハーバード大の4兆700億円の次に大きな基金なのです。ホプキンス大の基金はこれに比べると少ないように思えますが、それでも4180億円もあります。批判の矛先は、これらの資金豊かな大学ばかりがどんどん豊かになり、反対に資金が少なく本当に援助を必要としている大学は永遠に資金難のままであり、中流から低所得家庭の奨学金が切実に必要な学生は決してこの多額の寄附の恩恵を受けられないということにあります。
日本においても一部の大学に寄附が集中していると言えるかもしれません。日本でも同じような問題があると言えないでしょうか。
もし日本でもアメリカでも、大学に寄附される富がそれを必要とする全ての大学と学生に与えられるようになればどんなにかよいことでしょう。
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マーティ・キーナート
<プロフィール>
アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。日米両国においてビジネス、プレイヤー双方の実経験から、日米比較や日本の教育システムにさまざまな問題を提起。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授。
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