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コラム
(8)Shouldn’t We Invest More in Our Children?
マーティ・キーナート
日本に住む多くの人が幼児教育の「モンテッソーリ」という教育法を耳にしたことがあるでしょう。
モンテッソーリ教育法は、ローマで医師として知的障害児や貧困層児童への教育を行っていたイタリア人医師、マリア・モンテッソーリ/Maria Montessoriによって1907年から始められた独特な教育法であります。
3歳児から始められるこのモンテッソーリ教育法では、児童は自ら自分の意思で行動を決めるという「自由な環境」を提供することを重視し、子供達は独立して自分のペースで邪魔されずに集中することができ、教師は子供が次の行動に移る準備ができたかどうかを見極めるために見守ります。教室は木製の玩具など子供たちの創造性を促すために整えられた環境になっており、教員はそのメソッドを実践させるために養成された資格者です。子供の自主性と知的好奇心を促し、社会に貢献する人物を育てるためのこのモンテッソーリ教育は、アメリカでは1912年頃から注目されそこから急速にその教育法は普及し、その後日本を含む世界中に広まりました。
しかしながらモンテッソーリ教育の学校は、その教育環境を整えるために大概は学費が高く低所得者にとってはなかなか手が届かない学校であることが欠点でありました。
が、アメリカでは少なくてもこの欠点は解消されようとしているらしいのです。
世界の長者番付のトップに君臨するアマゾンドットコム社の創立者でもあるジェフ・ベゾス氏/Jeff Bezosは、2018年9月に低所得者家庭の児童のための「モンテッソーリ インスパイアード“Montessori-inspired”」という学費無料の教育ネットワークを立ち上げています。
その最初の資金として彼は200億ドル=約2200億円を提供し、プレスクールネットワークとホームレスの家族のための救援を行うといいます。
ジェフ・ベゾスのこの寛大な基金設立の理由は、アメリカにおける教育の必要性だけでなく、彼自身が幼少期に受けたモンテッソーリ教育の体験からによります。ニューメキシコ州のアルバカーキーで育ったベゾス氏は、モンテッソーリ教育の学校に2歳半から通い始めました。彼は大きなイーゼルに絵を描いたことや、靴紐を結ぶ練習のために特別なボードを使ったことなどを未だに覚えているそうです。
「本当に素晴らしい、なんて良いプログラムだったことか!」と彼は言います。またグーグル社のSergey BrinやLarry Pageをはじめ、ベゾス氏以外の経営者やリーダーたちも口を揃えてモンテッソーリ教育のことを褒め協力しています。
我々は、この壮大な慈善計画をおおいに褒め称え、そしてたとえ小さい規模でもできる限り見習うべきでありましょう。結局のところ、我々の将来は我々の子供達にかかっているのですから。
マリア・モンテッソーリ女史はいみじくもこう言っていました。“It is the child who makes the man, and no man exists who was not made by the child he once was.”「子供時代がその人を形成します。自分の子供時代をなくして大人になる人は誰もいないのですから」
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マーティ・キーナート
<プロフィール>
アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。日米両国においてビジネス、プレイヤー双方の実経験から、日米比較や日本の教育システムにさまざまな問題を提起。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授。
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