コラム

(23) The Sports World Too Helps Fight the Coronavirus

 マーティ・キーナート


多くの方はご存知だと思いますが、私は教育だけではなく、スポーツビジネスにも長年関わってきました。 ですから、今回のコロナウィルスによる世界中のパンデミックのさなか、果たして有名アスリートやスポーツ界の有名人、重鎮たちがどのようにこの世界規模の危機に対応しているのかが気になりました。

まず私の目を引いたのは、NFLチームのニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーであるロバート・クラフト氏です。彼は170万枚の医療用N-95マスクを中国から仕入れ、それをペイトリオッツのチームの専用ジェットで運ばせました。ジェット機は1回に運べる枚数が120万枚だったため、2往復したそうです。彼は仕入れたマスクの140万枚を医療用マスクが底を尽きかけていたマサチューセッツ州に寄付し、残りの30万枚は、母校のコロンビア大学があるニューヨーク市に寄付しました。
この大規模な寄付に関してクラフト氏は、
「この寄付によって、あらゆる人が何らかの方法で、人類のために戦ってくれている医療従事者の方々を手助けしてくれるきっかけになればいいと思っただけです」と語っています。

また、MLBの公式ユニフォームを手がけているファナティックス社の会長であるマイケル・ルビン氏は、ユニフォームを作る代わりに、その生地で少なくとも100万枚のマスクや医療ガウン、その他を作成して寄付すると発表しています。
ルビン氏は、ペンシルバニア州のイースタン市に本拠地を置くNBAのフィラデルフィア76ers のオーナーの一人でもあり、彼が経営するファナティックス社は、同市にあります。彼は「我々はすでにペンシルバニア州内に医療ガウンとマスクを配布し始めており、ニューヨークとニュージャージーにも届けられるようにするつもりである」と宣言しています。

選手たちも、世界中で多くの寄付を行なっていますが、中でも私が拍手を送りたいのは、ザイオン・ウィリアムソンです。彼は、名門デューク大学で1年間だけバスケットボールをプレイし、去年の6月のドラフトでニューオリンズ・ペリカンズから1位指名を受けた19歳の大注目の選手です。
3月11日、NBAは今シーズンの試合を一度中断し、残りの全試合を全てキャンセルする可能性もあり得ると発表しました。その発表の2日後に、ウィリアムソン選手は、ペリカンズのホームアリーナである「スムージーキングセンター」で働く1000人以上の従業員の約1月分の給料全てを肩代わりすると発表したのです。
弱冠19歳の彼は、「私の母は常に他人に敬意を払うこと、そして自分の立場に感謝することを教えてくれたました。ですから、私が彼らの給料を支払いたいと思います」と宣言したのです。

サッカーでは、スーパースターのライオネル・メッシ選手が密かに100万ポンド、約1億3200万円もの寄附をコロナウィルスと戦う人々へ行なっていました。スペインのチームバルセロナのキャプテンでもあるメッシ選手は先頭にたって「ステイホーム〜家にいよう〜」と人々に呼びかけ、さらに医療従事者を手助けする為の多額の寄附を自ら行なったのです。
3月24日、バルセロナホスピタルクリニックは、ツイッターアカウントにこう書き込みました。
「ライオネル・メッシ氏から我々がコロナウィルスに立ち向かう為の寄附を頂きました。あなたのサポートに心より感謝します」と。

日本のスポーツ選手たちも次々とこの恐ろしいウィルスに立ち向かうべく立ち上がっているのを見ると大変嬉しく思います。東京では日本のどの都市よりもより多くの感染者が増え続けています。読売ジャイアンツは東京都内の医療業界への支援金を送っています。監督の原辰徳氏をはじめ、阿部慎之助コーチ、そして3人のスタープレイヤーである坂本勇人選手、菅野智之選手、丸佳浩選手は、それぞれ一千万円ずつの寄付を表明しています。

世界中の人々の努力と頑張りが、この恐ろしいウィルスに打ち勝つ日が早く訪れるように祈っています。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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