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コラム
(31) From Koshien to Baltimore
マーティ・キーナート
さてベースボールファンの方の何人が、スティーブ・ラムという名前を覚えているでしょうか?
そう多くはないでしょう。もし貴方が阪神タイガースの熱心なファンならば、1981年と1982年に阪神タイガースでプレイしたスティーブ・ラム外野手を覚えているかもしれません。スティーブ・ラム選手彼は1981年には57試合に出場し、打率2割6分9厘、4本塁打、15打点の成績を残しています。彼は俊足だったため、代走に起用されることも多くありました。しかし1982年には17試合しか出場せず、打率わずか8分3厘でシーズン終了後に解雇されました。スティーブ・ラムは、ランディ・バースにはなれませんでした。
しかし南ジョージア大学を卒業していたラムは、1982年にアメリカへ帰国した後、オハイオ大学のビジネス専攻で博士号を取得しファンドレイジングのキャリアへと進みました。
まずはじめに、彼は開発とマーケティング部門での副社長補佐として、1988年から1991年までワシントンD.C.にあるスペシャルオリンピックス国際本部で働きました。その後彼は、1995年までは同じくワシントンD.C.の子供国立医療センターでCOOとして、その後にデューク大学の医療センターにて開発副総長として約10年間勤めました。デューク大学に在籍中、彼はデュークチルドレンズヘルスセンターやその他の大学内にある各医療センターの為に7年間で600億円を集める寄附キャンペーンを実施し、目標を上回る約706億円の調達に成功しています。
そして2005年からは、ボルティモアのジョンズホプキンス大学総合医療機関と同機関の同窓会組織のトップとして雇われており、そこでは150人ほどのスタッフと年間25億円の予算を動かしています。
2012年には、前NY市長であり、ブルームバーグニュースのオーナーでもある億万長者のマイケル・ブルームバーグ氏からの寄附を取りつける事に成功しました。
ブルームバーグ氏は、ジョンズホプキンス子供病院の建設の為に120億円を寄附しました。寄附によりジョンズホプキンス子供病院は現在も、世界でもトップの子供のための医療機関となっています。
この巨額の寄附は、1964年の卒業生でもあるブルームバーグ氏のジョンズホプキンス大学への寄附総額を1500億円に引き上げる結果となりました。
しかしながら、ラムの最大の功績は、2年前彼と彼のスタッフによりブルームバーグ氏から新たに1800億円もの寄附を調達したことでしょう。それによりブルームバーグ氏の寄附総額は一気に3300億円に上りました。
この寄附により、低所得層から中所得層の全ての学生はジョンズホプキンス大学における学費を心配しなくてすむようになったのです。
ブルームバーグ氏はこう述べています。
「私が寄附する1800億円の基金により、私は自分が恩恵を受けたのと同じように、経済的状況に関わらず才能ある学生達に門戸を開きたいのです」と。
また、この寄附のおかげで昨年よりジョンズホプキンス大学は学生ローンのすべてを返済不要の奨学金に変更することができました。
スティーブ・ラムは、甲子園からボルティモアまで、確かに長く、しかし成功した道のりを今もなお歩んでいます。
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マーティ・キーナート
<プロフィール>
アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。
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