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コラム
(35) From the Bottom 1% to the Top 1% Via Education
マーティ・キーナート
数週間前、私はお気に入りのアメリカのTVショー「60 Minutes」を見ていました。1968年に始まったこの有名な番組は、ニューヨークタイムズから「米国で最も尊敬されるニュースマガジン」と銘打たれた権威あるニュースショーです。2002年には、この「60ミニッツ」は、"50 Greatest TV Shows of All Time”(歴代ベストTV番組トップ50)の6位にランクインしています。
その「60ミニッツ」で今回は、テキサスの田舎の貧しい母子家庭で育ったダレン・ウォーカーというゲイの黒人男性の話を取り上げていました。ダレンの母親は息子がこの貧困から抜け出す唯一の手立ては、教育しかないと信じていましたが、それにお金をかける余裕は全くありませんでした。しかし母親は「ヘッドスタート」プログラムという、米国保健省が低所得層家庭の子供に早い時期からの総合的な教育を授けるサービスのことを知り、幸いにもダレンはこのヘッドスタートプログラムの最初のクラスに入る事が出来たのです。
ダレンは優秀な生徒でオースティンにあるテキサス大学の奨学金を得てそこで法律学位を取得しました。それから彼はNYに渡り大きな法律事務所で働いた後に銀行へ転職、そして証券トレーダーとして大成功しました。その後、彼は自分の成功体験から慈善事業への情熱を持ち続け、ハーレムエリアでの地域奉仕活動(コミュニティーサービス)での経験を積み重ねた後にフォード基金に雇われ、2013年にはそのトップの責任者となりました。
フォード基金のトップとして彼は毎年1兆4000億円もの基金を運営し、世界をより良い場所にするために毎年約500億円の資金をどのようにして使うかを決定しているのです。そしてその資金で、毎年フォード基金は世界中のNPO法人などへ1500以上の寄附を行っています。その1つにはダレンが小さいころに恩恵を受けたヘッドスタートプログラムも含まれています。またそのほかの支援している有名な団体ではあのセサミストリートの制作団体であるThe Public Broadcasting Service (PBS)もあります。
テキサスの田舎の貧しい子供だったダレンは、今や年収1億円を超える米国の上位1%の高額所得者になりました。しかし、彼のルーツは底辺の1%にあります。だからこそ彼はその極貧層のニーズをよく理解しているのです。ダレンはフォード基金のミッションは、あらゆる形での不公平さと闘う事であるとしています。
また彼はフォード財団が所有していた多くの古いアート作品を売りに出しました。なぜなら、400にも及ぶそのコレクションの全てが白人アーティストによるもので、さらに1人をのぞきすべてが男性アーティストによるもの作品だったためです。彼はそれら売却した作品の代わりに、もっと多様性のあるコンテンポラリーアーティストの良い作品を買い、全く新しい財団のアートコレクションにしました。「芸術は社会的公平のための闘いにとってパワフルな味方である」とダレンは語っています。そしてその戦いはフォード基金とそのギャラリーの使命であると。
現在のコロナ下においてこのギャラリーは閉鎖されており、その場所はワクチン接種センターになっています。
願わくばコロナが収まった後、ニューヨーク訪問の際は皆さんもぜひこのギャラリーを訪ねてみてください。
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マーティ・キーナート
<プロフィール>
アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。
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