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数字に見る東北大学

1,097名の東北大学学生の力。

「東日本大震災」の復旧・復興に立ち上がった学生組織“HARU”。
40年後の未来までをも見据えた「持続可能な文明の再構築」を目標に。

2011年3月11日。「東日本大震災」。

この日から、何かが変わったような気がします。

一例として、大震災の苦難が生み出した、「未来への希望」を紹介しましょう。 自らが大きな被害を受けながら、東北大学では、被災地の中核大学として、組織や個人による数え上げることのできないほど多種多様な被災地支援活動が生まれました。 3月24日に有志の学生で立ち上げ、現在は東北大学在学生1,097名(7月29日現在)が登録する「東北大学地域復興プロジェクト“HARU”」もまさにその一つの組織です。

一括りにボランティア組織と捉えられがちですが、“HARU”の志は気宇壮大です。 目的は、「東日本大震災による被害を受けた東北地域の復興支援、地域再生」。現時点での各種のボランティア活動はもちろん、今後の復旧、復興の段階に応じた息の長い支援をめざしています。40年後の未来を見据えた「東北復興のためのグランドデザインの策定と行動」、「持続可能な文明の再構築」が最終的な目標。「知の拠点」東北大学らしい取り組みを、初期の段階から意識していました。そのため団体名を決めたときから、早々に「ボランティア」の文字を消したそうです。

『設立当初はとても人数が少なく、数人で外部交渉やメンバー管理、現場指揮や広報などを引き受けていましたから、てんてこ舞いでした。徐々に本部メンバーの人数も増えて少しずつ対応の幅が広がり、さまざまな活動を行うことができるようになってきました。その分、互いが自分の考え、意見を持って参加していますから、もう毎回、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論です。それぞれ、所属学部や大学院が異なります。個人としての違いはもちろん、所属学部などによって、議論の論理のたて方や認識の違いに、一種の特徴があるものだと驚きました。もちろん、勉強にもなっています。私は、理学部っぽい、のだそうです』

と、“HARU”の広報部リーダー津川靖基さん。地球物理学専攻の博士課程後期1年の大学院生です。

『“HARU”と命名した由来は、被災した東北の地に春を!ということですが、“HARU”にはいろいろな思いが込められています。詳しい説明文はホームページに載っています。ぜひそちらを見ていただき、そのことを含め、私たちのサイトで“HARU”の活動や目標の全体を知っていただければと思います。“HARU”のサイトなどを通して、ボランティアを求めている地域や組織、被災地のために何か力になりたいと思っている学生や団体の橋渡しの役割をも果たすことが、広報の役割でもあります』

“HARU”は実際の活動としておよそ五十ものプロジェクトを随時実施してきました。 大学内では、国内有数の蔵書数を誇る東北大学附属図書館の復旧作業を応援。若い学生パワーの大勢の参加で東北大学図書館は、予想をはるかに超えるスピードで復旧。5月の連休明けには開館できました。6月14日の東北大学附属図書館創立百周年記念日に「感謝状」を贈呈されたほどの活躍ぶりです。

大学外では、気仙沼市、仙台市、山元町、名取市、石巻市などでさまざまなボランティア活動を行っています。たとえば山元町では、“HARU”の活動の始まった当初から四十名ほどの学生が連日お手伝いに駆けつけました。

『私の被災地での活動は、大学が始まる前の4月の終わりに1週間ほど山元町にお邪魔したのが始まりです。私は、社会福祉協議会のボランティアセンターのお手伝いが主でした。朝7時40分発の行きのバスの中は、みんなにぎやかなのですが、午後5時仙台着の帰りのバスでは疲れ果ててみんな眠っていました』

と工学部建築科4年の北澤幸絵さん。

『私たちボランティア学生は、結局は、部外者です。現地の方と仲良くなるほど、皆さんがこれから被災という現実と一生向き合って生活を築き上げてゆく困難さが思われて、申し訳ないような気持ちになります』と顔が曇る北澤さん。

『私は、長野出身ですが、ふるさとへの愛着の気持ちが強く、これまで、東北大学や仙台は、一時的に学生時代を過ごすところとの感じで、あまり関心を持てないできました。ところが、今回の“HARU”の活動に参加して、他の学部の学生や大学院生と知り合い、一緒に活動し、過酷な現実にも向き合い、自分がとても変わってきたように感じます。まず、この東北という地がとても好きになりました。また、東北大学の学生であるということに誇りが持てるようになりました。学部卒業後も東北大学や仙台に残り、復興のお手伝いをしていきたいとの思いが湧いてきています』

“HARU”の目標には、被災の現場を目の当たりにすることにより、学生たちが課題を議論し、解決、そこからさらに発展させ、個人として成長することも意識されています。

『今後は、これまでのメーリングリストを用いた活動方式を改め、より自発的な活動を中心に行っていきます』、とのことです。

筆者は、東北大学のある教授から頼もしい言葉を聞く機会がありました。 『大震災に遭遇し、東北大学の学生たちがとてもたくましくなった。今年の新入学生は、面構えがとても良い』。

この言葉を証明する事実が、テレビの映像で全国に紹介、感動と評判を呼びました。人気テレビ番組『鳥人間コンテスト2011』(読売テレビ主催)での「東北大学ウインドノーツ」の、見事で劇的なその勝ちっぷりです。被災により一時は参加すら危ぶまれた不利な状況を自ら克服。困難や次々と起こるアクシデントを乗り越え、他大学をはるかに圧倒する優勝を果たしました。

『東北大学の学生諸君!皆さんが東北、日本再生の先頭に立たないで誰がやるのか』。 筆者に寄せられた全国の同窓生、友人、知人から、東北大学学生へと託された伝言です。

“HARU”から、東北大学から、数十年単位での東北の復興と再生に、さまざまな方面で確実に関わり続け、活躍する学生たちを必ずや大勢輩出することでしょう。

『春は、東北大学からやってきた』。こう言われる日が、一日も早いことを切望します。




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