日本国際賞の授与母体である財団法人国際科学技術財団は、昭和57年11月1日に内閣総理大臣の許可を得て「日本国際賞準備財団」として発足しました。その後「国際科学技術財団」と名称を変え、日本国際賞の授与を始め、今年で22回目となります。
日本国際賞は、科学技術の分野における権威ある国際的な賞として、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に貢献したと認められた人に与えられるものです。
マスリー賞の授与母体The Meira and Shaul Massry Foundationは、南カリフォルニア大名誉教授のシャウル・マスリー氏の功績を讃える財団として1996年に創設されました。マスリー賞は、医学分野で世界的な業績を挙げた人に対して1名または1団体に与えられるものです。これまで17名の受賞者のうち6名がノーベル賞を受賞しています。
受賞の対象となったのは、「スタチンの発見と開発」です。
心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化による血管障害性疾患は、世界中で多くの人が罹患している疾患であり、動脈硬化を促進する要因は、高コレステロール血症です。遠藤氏は、血中コレステロール値を効果的に下げる薬を発見、開発しました。
遠藤氏は、青カビの一種であるPenicillium citrinumから得られた物質(ML-236B)が血中コレステロール値を下げることを発見し、その機序がコレステロール合成の律速酵素であるヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)還元酵素に強い親和性を持ち、拮抗的に強く阻害するためであることを明らかにしました。その後、組成が人間に近い犬のコレステロール値を下げることを証明し、更に共同研究により、ML-236Bが家族性高コレステロール血症の患者の血中コレステロール値を効果的に低下させることを証明しました。その結果、ML-236Bの系統の薬剤(スタチン)が多くの製薬会社により製造され、現在世界中の患者に投与されています。
遠藤氏のこれらの研究は、1985年にノーベル生理学・医学賞を受賞した米国のMichael S. Brown、Joseph L. Goldstein両博士によるコレステロール代謝に関するLDL受容体の研究にも大きな貢献したと言われています。
スタチンによる高コレステロール血症の治療効果が動脈硬化を背景とする血管障害性疾患を世界中で激減させることにつながった一連の研究において、遠藤氏が決定的な役割を果たしていることが、両賞の受賞につながりました。