100周年を迎えた2007年に発足し、12年の歩みを刻む萩友会。この間、さまざまな創造と改革の軌跡を刻んで、その活動も年々多様になり、活発化してきている。その動向を支える職員の一人が校友係の松野宏美さん。萩友会のキャラクターや校友旗など、同窓生に寄り添う心を軸に次々と新たな企画に挑戦している。女性が輝く時代とはいえ、仕事を続ける道程には結婚、出産、介護などの課題が横たわり、その結果、最善の策として転職を選択することも多い。彼女もまた転職でその状況を乗り越え職歴を重ねた豊かな経験知が、今、萩友会活動の活力を結実させている。 |
私は今、社会連携課校友係として萩友会事務局の運営に携わっております。萩友会の活性化へ会員の親睦を深める活動を主に、恒例行事・ イベントの企画運営、各地の同窓会開催のサポート、入会促進のための特典企画、さらに広報など、多様な業務に取り組んでいます。
この職務に着任するまで、さまざまな仕事を経験してきました。まず、大学卒業後に大手広告代理店へ就職。仙台のオフィスで、 主に企画を担い、通信会社や商社などの販促プロモーションを担当。約6年間勤めました。というのも、家族が病気になり看病と仕事の両立は難しく、退職せざるを得なかったからです。
次に人材派遣会社へ就職。2011年の東日本大震災も業務委託先で、大勢のスタッフと共に遭遇し、不安と恐怖の一夜を過ごしました。約6年間勤務したのち退職しましたが、前勤務先から萩友会事務局の仕事を紹介されました。母校で仕事をすることが決まった時、不安とともに得体の知れない大きな責任感を感じたことをよく覚えています。
派遣社員として萩友会で働いていた時に、基金事務局の渉外担当の立ち上げメンバーを募集していると耳にしました。考えこむよりカラダを動かして仕事に慣れていくタイプなので、すぐに応募。運よく採用されて、学内では珍しい企画営業職のような職務内容の「渉外スタッフ」となり、基金メニューづくりや仕事の枠組づくりを手がけました。その後、職員登用試験を経て、2018年4月から校友係に着任し、産休・ 育休を経て今年の4月に復帰した次第です。
とにかく現在の仕事に就くまでに、大学卒業後のストレートな一本道ではなく、かなり紆余曲折がありました。でも、取り組んだ仕事の一つひとつからさまざまな教訓を得ることができ、そのことが今の仕事のいろいろな面で、役立っています。
私は東北大学文学部で心理学科を専攻し、大渕憲一先生のもとで社会心理学を学び、「対人葛藤の解決」に関した卒論をまとめました。卒論では飽き足らず、修士課程に進学し、同じ切り口の発展形としての研究に取り組みました。
大学時代のオフタイムは、もっぱら吹奏楽部で、練習する日々でした。楽器はユーフォニウムを担当。吹奏楽部は約50年の歴史を重ねる中、女性部長が皆無と聞いて持ち前の勝気が過ぎてしまったのか一念発起して部長に立候補。100名を超える大所帯ながら同期が30人以上もいたことから、役割分担しながら協力して部を運営しました。よりよい活動をめざして部員からの要望に応えたり環境づくりなどに努め、演奏会はじめいろいろな思い出の詰まった大学生活となりました。
▲いつも和気藹々とした萩友会事務局メンバー |
現在の仕事は卒業生の方々にお会いすることが多いせいか、「東北大学生らしさ」とは何か、についてよく考えるようになりました。社会人になった当初は、東北大学出身と周りに話すのが、どこかためらう部分もありました。東北大学卒と言えば「真面目で頭がいい」とすぐ言われてしまうこともあり、どこか違和感があったからです。
渉外担当の仕事をするようになって以来、ビジネス最前線で企業のトップとして活躍される先輩にお会いする機会に恵まれました。鉄道運輸にとどまらず次代の観光をも見据えた取り組みをされていた、当時のJR東日本(株)の清野智会長。テレビ界のカリスマ的存在の東京メトロポリタンテレビジョン(株)の後藤亘会長、通信事業界をリードする(株)ミライト・ホールデイングスの鈴木正俊社長、よりよい児童書へ出版人魂を貫かれる(株)偕成社の今村正樹社長など、数知れません。
恥ずかしながら、卒業生の方々がこんなに第一線で采配をふるっておられるとは知らず、大変驚きました。同窓生の皆さまも案外、知らない方が多いかもしれません。
こうした先輩方は、各界や企業の高みに上られても決して奢らず、むしろ謙虚すぎる印象を受けました。また、大学への想いを大切にされておられ、「大学のために自分がでさることはやるから頼ってくれ」と口々に仰っていただき、お言葉のひとつひとつに温かいお気持ちを感じました。
卒業生の印象も少しずつ変化していきました。ビジネスの地平だけでなく高い所から社会を見つめて役割を全うする、学生時代のネットワークを大切にしながらもまずは孤軍奮闘して路線を固め、その上で他の方々の協力を仰ぐという共通点に気づきました。
それは、自分を振り返ってみても思い当たることがありました。誰かに頼る前に自分で納得するまで奮闘する。無意識のうちに自立の道を探っていたのでしょう。自分の中のどこかにも、諸先輩方と響き合うものがあり、先輩方の優れた人格や素晴らしい実績とは程遠いものの、「東北大学生らしさ」の共通項が見出しました。そんな気づきを持ってからは、東北大学が母校であることをますます誇らしく思えるようになりました。
萩友会事務局は卒業生や在校生、教職員にとどまらず、そのご家族や一般の方々と東北大学を共通項にして関わり合えることから、まさに東北大学のファンクラブ事務局だと思うようになりました。その意見を事務局の会議で述べたところ、「その意見で、もやもやしていたことが腑に落ちた」と他の職員の方に言われたこともあります。
会員の方々は東北大学を応援したいというファンのような思いをお持ちだと感じます。ファンクラブ事務局という意識で仕事に臨めば、ご要望や激励、時にお叱りの言葉にも常に前向きな気持ちで取り組んでいけます。
▲萩友会ラウンジでの打合せのようす |
仕事をする上では、会員同士のコミュニケーションステージを作ったり、優待事業など会員の皆さまに喜んでいただけるメニューやツールづくりをあれこれ考えています。これまでも、萩友会にもっと親しんでいただくよう「シュウとユウ」のキャラクターを提案して導入したり、校友旗を作成したりしました。
現在は、2019年9月28日(土)・ 29日(日)に開催される「東北大学112周年ホームカミングデー」の企画に入り、事務局一同、張り切っています。今年は、来年開催予定の東京オリンピックにちなんだ趣向も取り入れようと、東北大学とオリンピックの接点をさまざまな切り口からご紹介する企画を鋭意準備中です。
例年、好評をいただいている「”KIZUNA”スウィーツタウン」も企画立ち上げから関わらせていただいた大切なイベントの一つなのですが、今年も市内の有名菓子店やカフェの皆さまと限定コラボ商品などを企画中ですのでご期待ください。
「東北大学ホームカミングデ-」は、卒業生に限らず仙台市民の皆さまにもお楽しみいただき、仙台の秋の風物詩として愛される祭典になることを願って、事務局一同あれこれ知恵を絞り合っています。今後もこうした「萩友会」活動に触れていただくことで、東北大学をもっと応援したい気持ちになっていただけたら嬉しいです。