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川内萩ホールについて

公共建築賞(優秀賞)を受賞した百周年記念会館川内萩ホール。建築意匠や音響の特性などその魅力を紹介します。

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建築計画

東北大学工学研究科 教授
(都市・建築学専攻)
小野田 泰明

本件は、東北大学100周年記念事業の中核事業として始められている。具体的には、国立大学法人東北大学が、そのステータスを内外に広く発信するとともに、学生・同窓生・教職員の精神的支柱として、また地域とともに発展する拠点とすることを目的に、老朽化により使用頻度が著しく減じていた「東北大学記念講堂(50周年記念建物)及び松下会館」を、最新の計画技術を適用して一体的にリニューアルしたものである。

企画概要

当初、当該施設は、大学博物館として活用が検討されていたが、大学としての発信性、類似施設の状況、既存躯体とのマッチング、様々な法規的制約、運用に関わるコストと運用益の可能性などをシミュレーションした結果、コンサートホール的要素を加味した国際会議場の方向性が望ましいとの結論に達し、その方向での検討が進められた。

特記すべき第一の点は、基本構想並びに設計監修を、本学の卒業生で世界的に活躍する建築家の阿部仁史氏(現UCLA建築都市デザイン学科学科長)に委託した点である。これにより合理的な投資規模を保ちながら、優れたデザインを導入して最大限の発信効果を実現としている。第二には、用途が限定される「大学講堂」から、独法化後の大学に相応しいダイナミックな運営が可能となる興行場法該当施設とした点が挙げられる。さらに第三として、企画段階から運営を組み込んで綿密に企画を練り上げたことも重要なポイントと言えよう。

建築概要

外観は創立50周年で建造された東北大学記念講堂本来のデザインを可能な限り保存・修復してその歴史に敬意を示す一方で、内部はコストを厳しく吟味した上で必要な機能に応じて改変した。それぞれの技術面で特筆できる点は、以下の通りである。

意匠設計

建築音響上、最も響きが美しいとされるシューボックス型の形式を大胆に取り入れると共に、大学のシンボルカラーをモチーフにした独創的で落ち着きのある内装を実現している。また、ホワイエまわりは、豊かな緑にあふれる外部空間とホールをスムーズに繋ぐために主張を抑えた暗めの色調とする一方で、幾つかの異なる素材を組みあわせることで風格を表象している。

構造設計

既存躯体を活用しかつ、外部に耐震補強が見えないような位置での壁体補強を行った。特に、ホール上部は50年前の技術で仮構されたリベット打ちの梁であったが、それら躯体が許容するぎりぎりの設計荷重の中で高い遮音性能の実現のための新しい界壁を効果的に設置するなど、様々な工夫が凝らされている。

環境設計

空調・暖房・冷房・除湿と4つのモードを持つ設備に更新するとともに、空調騒音を加味した状態でホール内の静粛値NC-15を実現している。これは、第一線級のコンサート専用ホールと同等の非常に高度な環境と言える。

音響設計

東北大学電気通信研究所の鈴木陽一研究室によるハイブリッド可聴化システムを応用した音響設計により、最適な建築音響の実現を目指した。

プロジェクトマネージメント

こうした様々な困難が克服されて実現に至った背景には、建設JVや設計事務所の努力と、実際の発注を司った東北大学研究教育財団が取った高度なリーダシップと責任ある体制によるところが大きい。


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