まなびの杜38号

ガラス細工シリーズ4

クライオスタット(温度制御器具)

 大学におけるガラス工場の役割は、少しずつ変わりつつあります。実験装置のほとんどが手作りだった時代から、研究や装置の大型化に伴って、加工が容易な金属が使われ始めました。しかし、依然として多くの装置は特殊で、実験器具は装置に合ったものが要求されます。そこにガラス器具の「やわらかさ」が生かされ、高性能の装置が出来上がります。
 科学現象を解明するには、しばしば温度を変えて実験を行うことが重要になります。電子スピン共鳴という実験法では、マイクロ波共振器内の試料の温度を液体ヘリウムの沸騰点である-269度から+50度までの広い範囲で変化させます。同時に、±1度以下という温度の安定性と試料に光を照射することが必要です。このような条件は市販の器具では実現できませんので、改良を加えます。まず、温度の安定性を上げるために器具下部にヒーターを入れ、中ほどに試料を光で照射するための窓をつけました(写真左)。さらに、急激な温度変化への対応とガスの流れをよくするため、写真右のようにヒーターの上部に蛇腹を持った三重構造の部分を設け、必要な条件をクリアーしました。
 東北大学のガラス工場は、日本の大学初のガラス工場です。この伝統を守って、ガラス技術を後世に伝えていかなければなりません。

東北大学多元物質科学研究所 教授
ガラス・光器械工場 監督 山内 清語
工場ホームページ :http://www.tagen.tohoku.ac.jp/tech/shisetsu/glass.html
 
創立100周年
 
東北大学は2007年に
創立百周年を迎えます