未来への洞察力を磨こう
大見忠弘
=文
text by Tadahiro Ohmi
90年代半ばに工業社会に取って替った21世紀型情報社会・グローバルネットワーク社会の特徴は、情報のみならず資本や技術が光の速度(1秒間に地球を7周半走行)で世界中を駆け巡ることです。結果として、情報を瞬時にかつ正確に把握し、十分な判断のもとに即座に次の手を決断実行する人、企業、国が勝者になる時代です。正確な情報収集力、十分な判断力、スピード豊かな決断実行力といった、個人の能力が真正面に問われる時代でもあり、同時に、世界に散在する人類がこれまでに築き挙げた知的資産を瞬時に活用して世界に発信するなど、個人が活き活きと活躍できる時代でもあります。
21世紀型グローバルネットワーク時代に思う存分活躍しようとする人々の能力向上の手法についての私見を述べます。
誰でも、若い時にはプロジェクトの一員としての仕事に遭遇することがあります。世界中誰も知らない極めて新規性に富んだ目的のプロジェクトであればあるほど、一直線に目的が達成されるなどということは全くありません。随所でデッドロックに乗り上げて、仕事は頓挫します。あらゆる条件を考慮して、リーダーが進むべき方向を指示して仕事は継続されます。その時、毎回「自分ならかくかくしかじかの理由でこうする」、と自分の考えを記録しておきます。しばらくすると結果は明らかになります。自分の方針が間違ったなら、どこの状況判断・条件検討が不十分だったのかを検証して記録に残し、自分の能力を磨きます。これを繰り返すことにより、100%自分の判断が正確であるとなったら、世界中の誰も実現したことのない将来の社会構造、産業構造の時代に本流となる新規事業のリーダーを引き受けられるのです。若い時からの日々のたゆみない努力のみが仕事のできる人間、科学技術創造立国に不可欠な新技術開発・実用化・事業化プロジェクトを率いて成功に導けるリーダーを育てるのです。
さて、指導的立場に立った時に如何なる課題を新規事業として取り上げるかの決断を迫られることになります。人生において、最も難しいことと言ってよいでしょう。自分のやりたいことでは決してありません。将来の人類にとって何が必要なのかを予見・洞察する能力を磨かねばなりません。技術体系の変化、産業構造の変化、社会構造の変化の背後に流れる思想を推察し、将来進むべき方向を考え続けることなのです。
「出る杭は打つ」の工業社会から「出る杭は伸ばす」の情報社会、グローバルネットワーク社会に、すなわち才能豊かな人が「イジメ」を恐れて「バカ」を装うことなく、その才能をキラキラ輝かせて生きていける国や組織へ、今、わが国も変わろうとしています。青年の人口が我々の世代の半分に減少しようとしているわが国の繁栄を今後も維持するには、若い人達の才能は我々の世代の才能の少なくとも倍以上のものでなければならないのです。若者がひたむきに努力し続ける国だけに繁栄は訪れるのです。
おおみただひろ
1939 年生まれ
現職:東北大学未来科学技術
共同研究センター教授
専門:半導体電子工学
I N F O R M A T I O N
公開市民講座
自然史講座
「スコラボタニカ」
第1回4月15日(日)10:30〜12:00
「木・草・蔓の進化学」
理学研究科附属植物園長 鈴木三男
第2回5月20日(日)10:30〜12:00
「日本の芝生」
遺伝生態研究センター助手 庄司舜一
第3回6月3日(日)10:30 〜12:00
「里山の自然」
岩手大名誉教授 菅原亀悦
公開市民講座
野外講座
「―森のしくみをさぐる―」
(共催宮城植物の会)
理学研究科附属植物園助手 内藤俊彦
第1回 森の戸籍調べ
5月26日(土)13:30 〜16:00
5月27日(日)10:00 〜16:00
問合せ先:理学研究科附属植物園
TEL (022)217- 6760
http://www.biology.tohoku.ac.jp/garden/