同窓生インタビュー


平松希望さん

地域のために、農業の未来のために

2011年3月11日、私は大学の入学手続きのため仙台市内にいました。避難所で寝泊まりし、地震の大きな影響を目の当たりにしました。
入学後、「復旧から復興へ、そして地域おこしへ 」をコンセプトに活動するボランティア団体Re Roots(リルーツ )に所属し、家屋等の泥だしやコミュニティ農園等の開設などを行いました。当時、仙台市沿岸部の土地は津波により塩が浮き、瓦礫だらけで、農機具も住む家もないような状態でした。しかし年を経るごとに、畑には野菜が、田 んほには稲穂が実り、再生していく農村風景に心打たれるとともに、日々前向きに働く農家の方々の生き方に心からの尊敬の想いを抱きました。初めて稲穂が戻った田圃を見たとき、初めてお米や野菜を頂いて食べたとき、その一つ一つの瞬間が胸に焼き付いています。

平松さんの農園での一日

大学では農業経済学を学び、日本農業の現状、課題を知りました。生きるためになくてはならな い産業であるのに、高齢化や都市への人口流出により、 担い手が減少していました。特に津波被災地域では集団移転が決まったことで、農村や農業がより顕著に失われてくだろうことが分かってきました。
「自分にできることはなんだろうと考える中、全国各地での農業研修等の機会をいただき、人の温かさ、農業の楽しさ、自然の豊かさに触れました。そして、霙災の後も、日々の営みをコッコツ地道に再生してきたかっこいい農家の方々のように、私もなりたい、と思いました。
とは言っても、私は技術も知縁血縁も何もなく、農家になれるのかと周囲の方々も心配半分反対されることがありましたが、卒業後、宮城県内の農業法人などで2年間の研修を受け、2017年、仙台市荒浜を拠点に、24歳で新規独立就農することができました。
農地の確保、生産技術の習得、経営感覚を身に着けるなど多くのやるべきことがあり、試行錯誤の最中ですが、地域の方、販売店の方々に心配され、支えられ、助けられて、今まで何とかやってこられたなと、本当に感謝するばかりです。

昨年からは、育てた野菜を定期的に配送(サブスク)する事業を始めました。加えて農業体験等の受け入れ、新たな農業の担い手や地域産業の応援などを総合的に行い、地域支援型の農業を目指した活動に取り組んでいます。
その活動の一つとして、マリーゴールドの畑への植え付けなども行っています。荒浜地区は10年経った今も荒れた場所が多く、元住民の方も来られない、来たくないという話も聞きます。花を見て、「また来たいね」と言ってもらえるような、そういう場所にしたいんです。マリーゴールドは緑肥として鋤き込み、集団移転跡地の士地を畑にするためにも役立ちます。

東北大学でのつながりは今も続いています。現在、卒業生数名で、「とんペーファーマーズ」という農家サークルを立ち上げているのですが、場所や作目は違えども、時に励ましあい、切磋琢暦できる関係です。農業に興味を持つ在学生や卒業生が体験に来てくれることもあります。
東北大学は、多くの知見が得られるだけでなく、地域に開かれ、現場との積極的な接点ともなっている童要な場です。いつまでも学ぶ意識を忘れず、「土づくり ものづくり 人づくり」の経営理念のもと、いつか大学にも恩返しできるよう、頑張りたいと思っています。

とんぺーファーマーズの仲間とともに

Recommended Interview


TOPへ