農学研究科の社会人学生東北大学に通う社会人大学院生が増えています。社会人大学院生とは修士号や博士号の取得を目指し、大学院に通学する社会人の方々のことです。入学には一定期間の社会経験を経ることが条件です。農学研究科にも社会人学生が在籍していますが、動物生殖科学分野にも博士号取得を目指すエンブリオロジストが現在四名通学しております。不妊治療を行うクリニックで体外受精を行う技術者をエンブリオロジストと呼んでいますが、エンブリオロジストを統括する生殖補助医療管理培養士という資格が誕生し、その資格取得に博士号取得が必要になったからです。 体外受精を行うエンブリオロジスト 二〇一〇年のノーベル生理学・医学賞は、R.G.エドワード博士に授与されました。一九七八年に初めて人の体外受精に成功し、女の子を誕生させた研究者です。医者であるP.C.ステプトー博士と動物学者であるエドワード博士の共同研究の成果です。一九八三年には鈴木雅洲教授の指揮の下、わが国初の体外受精児が東北大学医学部で誕生しました。その後、約三十年の間に世界で三百万人を超える子供が体外受精によって誕生しております。 エンブリオロジストの資格認定と博士号 二〇〇二年にエンブリオロジストの資格認定制度が日本哺乳動物卵子学会を中心としてつくられました。生殖補助医療胚培養士(胚培養士)という資格です。そして五年後に生殖補助医療管理胚培養士(管理胚培養士)という資格もつくられました。二〇一〇年現在、胚培養士の資格取得者は全国で九百六十一名、管理胚培養士は十一名となっております。 東北大学で博士号を取得したエンブリオロジストすでに二名のエンブリオロジストが私の研究室で博士号を取得しました。農学研究科では博士号取得に際して、原著論文を国際誌に掲載することを条件にしておりますが、二人とも条件をクリアーしました。私の研究室に在籍中、それぞれ東北大学バイオサイエンスシンポジウムポスター賞や世界体外受精会議記念賞を受賞しました。体外受精技術は高度化し、これに対応して病院では研究所(研究センター)を併設するところが多くなっていますが、二人とも博士号取得後、管理胚培養士の資格を取得するとともに研究所の要職につき活躍しております。考えてみれば、二〇一〇年のノーベル生理学・医学賞受賞者のエドワード博士はお医者さんではありません。エンブリオロジストの先駆者とも呼べる方です。二〇一〇年のノーベル生理学・医学賞はエンブリオロジストの方々に刺激を与えました。 農学研究科での社会人大学院生受け入れ体制
農学研究科の多くの研究分野に社会人大学院生が在籍しております。受験資格や大学院での修士号や博士号の取得の仕方などについての情報は事務室を通して提供できます。社会人としての経験や実績を踏まえて大学院に通うことは、自身のキャリアアップや知的関心を満たすことにつながると思います。 |
佐藤 英明(さとうえいめい) |