2007年6月、仙台市堤通雨宮町の農学部で畜産利用学研究室(食品機能健康科学講座・動物資源化学分野研究室)創立60年記念講演会とパーティー(市内ホテル)が催され、久しぶりに旧交を温めました。現教授・齋藤忠夫先生のご挨拶の後、会場の大型スクリーンに映し出された「写真で振り返る教室の歴史」の1コマは、1970年当時にタイムスリップ、実験の苦しさ、楽しさなどさまざまな思い出がよみがえりました。
現在、大学教育に携わる身として常に心がけていることは、この時代に培われたものでした。それは「オリジナル・ドキュメント(原本)に当たること」です。研究者としては当然のことですが、ともすれば、安直な解説に頼りがちになります。文献検索・調査において、いわゆる「孫引き」は危険ということです。学校運営においても同じことが言えます。所管監督官庁などへの各種提出書類の作成には必ず正式な「通達・通知」あるいは「規程・基準」の「オリジナル・ドキュメント」を熟読・整理するよう努めています。しかし、同時に既存の事例にこだわらず、とらわれない独創的な視点も大切です。
2つ目に、「教わるのではなく、自ら学ぶ」姿勢が肝要ということです。畜産利用学研究室の指導教官・先輩はもとより、同期の友人との討論や研究態度に触れ研究の心構えを学びました。
学生の学修支援を考えるとき、「学生は教わるのではなく、教員も教えるのではなく、自ら学ぶ力を養うこと」を基本に、魅力ある学修環境を構築し、個々人の能力に磨きをかける教育・運営に努めております。
東北大学にはその学習(修)・研究環境が整っています。これからも研究中心大学として指導的人材の養成に輝かしい業績を残し続けていくことでしょう。
現在、全国の大学はさまざまな課題を抱えております。その1つに教員側からの「教育力」、学生側からは「学士力(学習の成果)」そして大学全体の「大学力」の維持・向上があります。東北大学は創立100周年を迎え、新たな100年の礎に「変革」(東北大学研究教育振興財団広報誌『樅の木』12号)をキーワードとしてこれらの課題をクリアしつつ発展していくものと確信しております。
「青葉城恋歌(星間船一作詞 さとう宗幸作曲)」の1節にある「また夏が来て、あの日と同じ流れの岸」の情景は、さまざまな記憶と共に変わることはありません。農学部は堤通雨宮町から青葉山キャンパスに移転予定ですが、培われた「心」はいまも活き続けております。パーティーで飲んだビールのほろ苦さもちょっぴり加わり、楽しいそして懐かしい1日でした。
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