機械系の新しい教育について 大学教育の潮流
吉田 和哉=文
text by Kazuya Yoshida
 大学院機械系(機械システムデザイン工学専攻、ナノメカニクス専攻、航空宇宙工学専攻、バイオロボティクス専攻および情報科学研究科の一部)では、「機械工学フロンティア創成」と名づけた新しい大学院教育プログラムに取り組んでいます。これは、文部科学省・大学院教育改革支援プログラムに採択されたものであり、2007年度から三年間の予定で実施されています。これに先立って、航空宇宙工学専攻では、2005〜2006年度の2年間、文部科学省・魅力ある大学院イニシアティブプログラムに採択され、「フライト実践による航空宇宙フロンティア」と題して、飛行機やロケットのモデルを、自分たちの手で飛行させながら、飛行実験の難しさと楽しさを学ぶ授業を実施してきました。今回のプログラムはこれを機械系全体に展開したものです。

写真1 東北大学新キャンパス移転用の広大な敷地で、航空子モデルの飛行実験を行っている。
写真1 東北大学新キャンパス移転用の広大な敷地で、航空子モデルの飛行実験を行っている。

 「機械工学フロンティア創成」プログラムでは、以下の2つの新しい授業を進めています。
 まず「機械工学フロンティア」と名づけた授業では、修士1年生・1学期の学生を対象として、修士研究の導入となるようなミニ・プロジェクトを実践します。プロジェクトという言葉を耳にする機会も多いと思いますが、研究や開発において、明確な目標を立ててそれを期限までに達成すること、そしてチームを組んで皆の力を合わせ、ものごとを実現することが求められます。本授業では各研究室の指導のもとに、チームを構成して魅力的なテーマに取り組み、提案書の作成、概念検討、中間審査会、ものづくりの実践、評価実験とまとめ、最終プレゼンテーションへと段階を踏みながら、研究・開発のための基礎能力を鍛えます。
 次に「イノベーション創成研修」と名づけた授業科目を、従来の修士研修に代わる新たな選択肢として導入しました。機械工学の各先端領域における分野横断的な研究や、革新的技術や新規産業の創出につながるような学術的イノベーションを行う研究など、従来の修士研修の枠組みにとらわれない新しい課題に対する取り組みを「イノベーション創成研修」として単位認定することにしました。特に、国内外の研究機関や企業に赴いて実践的な共同研究を行うことを推奨し、必要な支援を行います。修士課程の修了認定については、本研修の成果を修士論文としてまとめることにより、論文審査を行います。

写真2 日米の学生が共同して飛行実験モデルを作成し、飛行性能の評価を行った(米国パデュー大学にて)。
写真2 日米の学生が共同して飛行実験モデルを作成し、飛行性能の評価を行った(米国パデュー大学にて)。

 「機械工学フロンティア」につきましては、2007年度には「フライト」および「ロボティクス」をキーワードとしたプロジェクトを実施しました。写真1は、本学青葉山キャンパス内の実験フィールドで、飛行実験を行っている様子です。学期末には選抜チームを米国パデュー大学に派遣し、同大学の学生とともにAIAA(米国航空宇宙学会)主催のDesign/ Build/Flyコンテストへ向けての共同作業を行いました(写真2)。なお、同コンテストでパデュー大学は、参加49チーム中3位という好成績をおさめました。
 2008年度には、「ナノ」「バイオ」や「医工学」を含む機械工学の各分野へと展開し、約130名の大学院生が30以上のテーマに分かれて、実践的な研修活動を行いました。また「イノベーション創成研修」では、博士後期課程へ進学してさらに研究を深めようというモチベーションの高い学生を対象として、海外の大学や研究機関へインターンシップ派遣を行っています。早い時期に海外での研究活動を体験することは、学生諸君の成長に大きく資するものと確信しています。


吉田 和哉 よしだ かずや

1960年生まれ
東北大学大学院工学研究科教授
専門:宇宙ロボット工学・宇宙探査工学
http://www.astro.mech.tohoku.ac.jp/MechFrontier/


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