「海の生き物たち」 2
マナマコ

 小石にも魚にもならず海鼠哉  子規
 マナマコの形は丸くも長くも伸縮自在。それ故に正確な成長曲線もわかっていません。私たちの身近にありながらあまり研究されていない動物なのです。そんな奇妙な動物ですが、江戸時代には中国に向けた日本の輸出商品(俵物)でした。今でも東アジアでは、食用あるいは薬用として利用されています。筆者はロシア極東地区で野菜サラダに入っている賽の目のマナマコを食べました。
 マナマコはウニやヒトデと同じ仲間(棘皮動物)です。その証拠に輪切りにすると五本の細い筋肉がみえます。また、マナマコには色彩の違うアカ、アオ、クロの三型がいます。これらはどの図鑑を見ても一つの種類とされていますが、私たちの遺伝学的研究により、アカ型がアオ型やクロ型とは違う種類であることが明らかになりました。昨年のことです。
 女川のマナマコは、六月から七月にかけて産卵します。アカ型はアオ型やクロ型と交配したら子供は何色になるのでしょうか。今、私たちはそれらの交配実験に取り組んでいます。「安々と海鼠のごとき子を産めり(漱石)」と謳われましたが、なかなかどうしてこの交配実験は誰も成功していないのです。
 思うこといはぬさまなる生海鼠かな  蕪村

東北大学は2007年に
創立百周年を迎えます

(農学研究科附属複合生態フィールド
教育研究センター 木島 明博)