今回の交換留学には大きく2つの目的がありました.私の専攻である航空宇宙工学をより深く学ぶため,そして宇宙飛行士や海外PhDを目指した自己研鑽をするためです.この10ヵ月間でどちらも十分に達成することが出来ました。
私が留学したスウェーデン王立工科大学(KTH)は航空宇宙工学分野においてヨーロッパや世界で高く評価されています.また,東北大学では学部生である私でもKTHの修士課程の授業を履修することができます.修士のヨーロッパの学生達に囲まれながらレベルの高い授業を履修するというのは,非常にやり甲斐があり刺激的な環境でした.授業の形式も日本とは大きく異なり,講義と共にグループワークやプロジェクトに重点が置かれていました.講義で聞いた内容を踏まえて皆で実験やプロジェクトに取り組むことで,より深く,また実践的に理解することが出来ました.例としてFundamentals of Spaceflight(宇宙工学)という授業では「一年間で6個の宇宙ゴミを除去する計画を提案せよ」というプロジェクトに取り組みました.また宇宙飛行士の先生が行っているHuman Spaceflight(有人宇宙飛行学)という授業では「静止軌道上での有人による衛星修理サービスについて計画せよ」といったものでした.どちらのプロジェクトでもロケットや衛星の軌道などの講義で触れた内容と共に,費用の推定や市場調査などの現実的な問題についても自分達で調べて考えていきました.こういった授業は留学をしなければ受けることが出来なかったため,将来エンジニアになる身として非常に貴重な経験を積むことが出来ました。
また今回の留学では「自分が日本を出ても活躍できる素質があること」を確かめたいという思いがありした.私は小さな頃からずっと宇宙に行くことを目標にしています.SpaceXなどによる宇宙旅行ビジネスも始まっていますが,依然として一般人に宇宙は遠い存在です.大金を支払う以外では宇宙飛行士になり任務を背負って行くしかありません.そのためには世界中の人たちとの高い協調性やコミュニケーション能力が求められます.また私は修士課程を終えた後アメリカ大学院の博士課程への進学も視野に入れています.そのどちらの夢のためにも,私は自分が日本と異なる文化や環境にも適応でき,また世界の様々な人々と円滑にコミュニケーションをとりながら,その中で時にはリーダーシップも発揮していく必要があると感じていました.今回の留学の中で,授業のグループワークや授業外での学生達との関わりを通じて,自分にはその資質があると実感することができました.グループワークでは周りの意見を聞きながら自分の主張をしていきグループとしての方向性をまとめ,また授業外では東北大学に興味のある学生達に対して留学のサポートを行いながら様々な相談に乗り打ち解け合いました.渡航前と渡航後でTOEFLの点数が向上したことから純粋な英語能力の向上も確認することが出来ました。
上記のように,今回の留学では私が目的としていた「より深い専門科目への理解」と「自己研鑽」の両方を十分に達成することができ,非常に有意義なものとなりました.私は自費留学が困難であり,奨学金を頂くことがなければ留学が出来なかったと思います.非常に手厚い経済支援をして下さった東北大学基金グローバル萩様に深く感謝いたします。