私は医学科3年次の基礎医学修練というカリキュラムを利用して、初めての東北大学医学部生としてノルウェー科学技術大学(NTNU)カブリ研究所での研究活動を体験してきました。ここは2014年にノーベル医学・生理学賞を受賞した研究者の方のいる、脳研究の世界ではトップクラスの研究所です。
研究内容は、遺伝子組み換えマウスを用いて、マウスの脳の嗅周野という部分の介在ニューロンの特徴について調べるというものでした。まだ経験も知識もない学生ということで、指導教官の方に簡単な研究テーマを与えていただきました。しかし、実験の結果は予想と異なり、研究とは思った通りにはいかないものなのだと感じることになりました。このことをミーティング等で指導教官を含めた研究室のメンバーに伝えると、なぜそのような結果になってしまったのかと一緒に考えてくれ、多くのアドバイスをいただくことができました。結果として、小さいながらも指導教官も予期しなかった新たな発見をすることができました。現在は論文という形で研究をまとめるために、帰国後も指導教官などと連絡をとりながら執筆活動に励んでいます。留学を通じて、研究活動の大変さと達成感を味わうことができ、研究の醍醐味にわずかですが触れられることができたように思います。今後も研究に携わり、科学・医学の発展に貢献したいという思いを強くしました。
普段の生活は、他の留学生との英語力、科学的知識・思考力の差を感じる日々で、初めは辛く思うことも多くありました。日本にいる時は、他の学生と比べて英語はできる方だと比較的自分の英語力に自信を持っていました。しかし、留学生同士の会話についていけなかったり、専門的な内容のプレゼンが全くわからなかったり、論文を読むのに手間取ったり、専門的な内容を人に伝えられなかったりと、自分の能力不足に絶望感を抱くこともありました。しかし、その分向上心を常に保持して過ごすことができました。留学生や現地のノルウェー人学生と交流したり、空いた時間に積極的に論文を読んだり、セミナーに参加したりと、精力的に自己成長に取り組むことができました。留学生活の終わりになっても、研究所のミーティングの内容がわからなかったり、リスニングが上手くできず、友人や同僚が何を言っているのかよくわからなかったり等、まだまだ満足できるレベルに達することができませんでした。なので、留学中に感じた危機感・劣等感を忘れず今後も語学・専門知識の習得に励みたいと思います。
研究所の方はとてもフレンドリーで、たくさんの研究者の方と交流することができ、将来の進路の参考になりました。また、寮、研究所の他の学生、学生向けのイベントなどを通して、たくさんの学生とも交流することができました。研究活動だけでなく、世界幸福度ランキングで常に上位にいるノルウェーという国の文化・制度、様々な国・専門の留学生の考え方も学ぶことができました。今後もこちらで出会った友人・知人との交流を続けて行きたい、またNTNU・ノルウェーに戻ってきたい、研究活動を継続していきたい、と強く思える大変貴重な経験をすることができました。